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2018年2月5日 沖縄県名護市長選挙で新人渡具知氏が現職稲嶺氏に勝利

産経新聞】安倍政権支援の渡具知氏が初当選「名護を変えての思い」
米軍普天間飛行場沖縄県宜野湾(ぎのわん)市=の同県名護市辺野古移設問題が最大の争点となった名護市長選は4日、投開票され、無所属新人で元市議の渡具知武豊(とぐち・たけとよ)氏(56)=自民、公明、維新推薦=が、3期目を目指した無所属現職の稲嶺進氏(72)=民進、共産、自由、社民、沖縄社大推薦、立民支持=を破り、初当選を決めた。投票率は76・92%で、前回(76・71%)を0・21ポイント上回った。

 安倍晋三政権が全面支援した渡具知氏の勝利で、辺野古移設を加速させる環境が整い、移設の早期実現へ大きく前進しそうだ。

 初当選を決めた渡具知氏は「当選は『名護を変えて、もっと発展させてくれ』というみなさんの思いだと思う。これからが大事だ」と強調。普天間飛行場の名護市辺野古への移設については「国と県が係争中なので注視していく」と述べた。

 名護市長選は、辺野古移設を着実に進めたい安倍政権と、反基地を貫く「オール沖縄」勢力の象徴、翁長雄志(おなが・たけし)知事による「代理戦争」の構図だった。今秋に控える知事選の前哨戦にも位置づけられ、両陣営は国政選挙並みの総力戦を展開した。

(http://www.sankei.com/politics/news/180204/plt1802040020-n1.htmlより抜粋)

 

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(画像は渡具知氏の公式ホームページ)


 沖縄県名護市の市長選挙が2月4日に投開票され、無所属新人で元市議の渡具知(とぐち)氏と無所属現職の稲嶺氏の一騎打ちの結果、渡具知氏が当選した。
 沖縄県名護市と言えば宜野湾(ぎのわん)市のアメリカ軍普天間飛行場を名護市辺野古へと移設する話が拗れに拗れていることで有名なあの名護市である。現職の稲嶺氏は翁長沖縄県知事の支援を受け、反対の姿勢を強く打ち出していた。
 今回の選挙戦でも稲嶺氏が辺野古移設反対を訴える一方、渡具知氏は移設問題については「国と県が係争中なので注視していく」と中立的な立場を述べるにとどめ、むしろ市民生活の向上や経済振興などを強調したという。またその中で政府とも協調し、稲嶺市政下では停止していた米軍再編交付金を活用した地域活性化を謳った。

 

今回の渡具知氏勝利には2つのポイントがあると感じる。

 

ひとつは、米軍飛行場の辺野古移設問題である。もともと移設の話は普天間飛行場周辺が住宅街であり、危険だからということで持ち上がったのだ。それが着々と準備が進められていた中、民主党政権時に鳩山元総理にひっくり返され、今まで翁長知事を中心に強硬な反対活動が続けられてきた。しかしここのところの北朝鮮情勢の緊張に伴い米軍の訓練も過激さを増し、以前よりも緊急着陸などのトラブルが増加。普天間飛行場隣の小学校校庭にヘリの窓が落下した事故は非常にインパクトが強かった。これを受け、今まで辺野古移設に反対していた住民も「そうはいってもやっぱり普天間は危険だよね、移設の必要があるよね」と思ったのではないか。

 

 もうひとつは経済政策である。
今回の選挙については尾長知事の後ろ盾を持つ稲嶺氏と、自公政権の後ろ盾を持つ渡具知氏による代理戦争だとする面が大きく伝えられている。
 しかし、今回の選挙は移設問題の是非を問う国民投票ではなく名護市長選挙である。名護市の市政にとって移設問題は数ある課題のうちのひとつでしかない。大きなひとつではあるものの、移設問題と反米アピールにばかりうつつを抜かさず、しっかりと足元の経済を地固めすることを宣言したのが渡具知氏の勝因だろう。
 これは国政でも言えることだが、ある大きな政治的問題があるとき、それに対する意見、つまり辺野古移設推進と反対などは選挙の争点になりやすい。しかし有権者が一般により強い関心を持つのは自分たちの暮らしであり、経済政策である。
国政で野党がいくらモリだカケだ、あるいはアベノミクスは失敗だと声を上げても肝心の選挙で勝てないのは、アベノミクス以上の経済政策が打ち出せていないからに他ならない。「アベノミクスは失敗だ」ではなく「私ならアベノミクス以上に国民の皆様の生活を楽にできます」と言わなければならないのだ。
今回の名護市長選においても「稲嶺氏よりも渡具知氏の方が私たちの生活に関心を寄せてくれている」「渡具知氏の方が私たちの財布を潤わせてくれる」と思った有権者が多かった結果が今回の渡具知氏の勝利に表れているのではないか。

 

もうひとつ、私が注目したのは、現職の稲嶺氏が72歳であるのに対し、新市長の渡具知氏が56歳である点だ。72歳と言えば一般企業で言えば定年を迎え、雇用延長の期間も終え、もうすっかりリタイアして年金生活をしている年齢だ。それに比べて56歳、まだまだ生産年齢人口に数えられる渡具知氏の方が、これからの名護市と名護市民の生活についての責任を負うことができると考える。また一般論として、若い人の方が現状に即した柔軟な発想ができるだろう(56歳を「若い」と言うのも違和感があるが)。名護市民が選んだ新人市長の今後の市政に期待したい。