News: HARDBOILED

ハードボイルドにニュースの解説をします。

2018年2月23日 消費者物価指数、13ヶ月連続上昇

【読売新聞】消費者物価、0・9%上昇…13か月連続上昇

 総務省が23日発表した1月の全国消費者物価指数(2015年=100)は、値動きの大きい生鮮食品を除く「総合」が100・4となり、前年同月比0・9%上昇した。
 上昇は13か月連続で、上昇率は2017年12月と同じだった。

(http://www.yomiuri.co.jp/economy/20180223-OYT1T50023.htmlより抜粋)

 

 f:id:arkeninger:20180223195715j:image

(画像は黒田日銀総裁)

 

消費者物価指数はその名前の通り消費者が触れる物価を表している。指数には3つの指標があり、全品目をまとめた『総合』、天気などの影響を受けやすく経済状況と価格変動の関連が比較的薄い生鮮食品を計算から除いた『コア』、酒類以外の食料および石油・石炭・天然ガスなどのエネルギーを計算から除いた『コアコア』である。
実はこの分類は日本独自のもので、諸外国では日本で言う『コアコア』を『コア』として扱っている。

日本ではアベノミクスにおいてこの消費者物価指数の上昇率が2%程度となるような緩やかなインフレを目標にしている。これはリフレ派の経済政策の考え方に基づくもので、20年も続いたデフレによって縮小した経済市場を混乱が起きない程度のペースで拡大させることで経済全体のパイを広げ、消費や税収を拡大させる狙いだ。
事実、経済関連指標はアベノミクスが一定の効果を上げていることを示している。ただしまだまだ目標には届いておらず、進み方も中途半端なため、充分とは言えないことを付け加えておく。「もっとやれ」である。

今回発表された消費者物価指数は2017年末では前年比1.4%と、まだまだ2%の目標には達していない。経済専門家たちはこの目標を達成するためには今年度の補正予算は5兆円規模で出す必要があると口をそろえていたが、実際に提出され、承認された補正予算は2兆7000億円と、いつも通りの無難な額であった。このことからもたった0.数%と思うことなかれ、2%への道のりがまだまだ遠いことが、経済のニュースに普段触れていない人にも理解できるだろう。

とはいえ、状況は民主党政権下、あるいはそれ以前と比べてかなりよくなっている。実際にデフレからインフレ傾向にわずかながら転じている。
インフレでは物の値段が上がり、デフレでは下がると言うが、これはあまりにも単純に説明しすぎている。ともすれば同じ商品の値段が変わるのだと考えられがちだが、正しくは、インフレでは物の値段とクオリティが上がる。同じカテゴリの商品でもプレミアムラインの品揃えが増え、安くて品質の悪い商品は淘汰されていく。一方デフレではその逆に、同じカテゴリの商品でもプレミアムラインが淘汰され、品質が悪くても安い商品が増えるのだ。
一般消費者も肌感覚で「以前よりもワンランク上の印象を受けるような、高級感のある商品が増えた」と感じるのではないか。

先日、日銀総裁人事が発表され、黒田総裁の留任がほぼ確定した。黒田総裁はこの消費者物価指数上昇率2%を目標に、アベノミクスを支えてきた。黒田総裁の続投は、まだまだこのスタンスでインフレ目標を追っていくと言うメッセージだ。
黒田日銀総裁については、アメリカのフィナンシャルタイムズも「任期前半に過ちを犯したが、それをカバーして有り余るほどの成果を上げた」と高く評価している。任期前半の過ちとは消費増税に賛成したことである。
黒田総裁下の日銀と政府の連携による経済への取り組みは、まだまだ充分とは言えないが方針は間違っていない。今後さらに強化して推進してくれることに期待したい。

一方でなかなか上がらないのは賃金だ。当たり前だがインフレは物価と賃金がともに上がる状況によって実現する。物価だけが上がり、賃金の伸びがイマイチな現状は、スタグフレーションまではいかないものの、もどかしさがある。
こちらも賃金を上げない企業に法人増税を課すことなどが検討されているが、働き方改革の話題とともに一般国民=労働者=消費者の待遇向上を期待できるかといえば、経営者への配慮によって難航しているうえ、働き方改革に関するデータの不備により国会での議論そのものがガタガタしかけている。本来なら野党こそ、労働者の地位向上を訴えてほしいところだが、協調して生産的な議論が行われる気配は今のところなさそうだ。
ただ、期待が持てるのは春闘だ。経団連の榊原会長は政府の訴え通り経営者に3%の賃上げを要請している。私は経団連も榊原会長も基本的には嫌いなのだが、このことは評価したい。さらに連合はベア2%を含む4%の賃上げを要求しており、残るは各企業経営者の判断のみだ。
これまで労働者をさんざん買いたたき、甘い汁を吸ってきた企業がすぐにそのうまみを手放すとも思えないが、社会的要請に応える企業もあることだろう。それがどの程度か、あるいはどこの企業が自分達だけの利益のために全体の足を引っ張るのか、今年の春闘は見ものである。