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2018年3月23日 韓国・李明博元大統領が逮捕される

産経新聞李明博元大統領を逮捕 韓国検察、朴槿恵被告に続き4人目

【ソウル=桜井紀雄】韓国検察は23日未明までに、巨額の収賄などの疑いで、元大統領の李明博(イ・ミョンバク)容疑者(76)を逮捕した。ソウル中央地裁が22日、検察が請求した逮捕状の発付を認めた。韓国大統領経験者の逮捕は4人目。収賄罪などで公判中の前大統領、朴槿恵(パク・クネ)被告と2代続けて大統領経験者が同時期に刑事責任を問われる事態となった。

 逮捕状発付の審査では通常、容疑者本人の審問が行われるが、李容疑者が出席を拒み、地裁は書類だけで審査。「証拠隠滅の恐れがある」などとして発付を認めた。検察がソウルの自宅で逮捕状を執行し、ソウル東部拘置所に収監された。

 李容疑者は、容疑の大半を否認し、今回の捜査を文在寅(ムン・ジェイン)大統領の左派政権による旧保守政権への「政治報復だ」として強く反発してきた。李容疑者は22日、フェイスブックに「誰かを恨むというより、全ては私のせいだという心情で、自責の念を感じる」との自筆のコメントを掲載した。

 李容疑者は2008〜13年の大統領在任中、情報機関の国家情報院から裏金を上納させたり、李容疑者が事実上の所有者と検察側がみる会社の訴訟費をサムスングループに肩代わりさせたりするなど、計約110億ウォン(約11億円)の賄賂を受け取った疑いが持たれている。韓国メディアによると、検察は約350億ウォンの横領のほか、脱税や職権乱用など計十数件の容疑で逮捕状を請求した。

 李容疑者は14日の取り調べで、国情院からの資金受け取りについては、対北朝鮮工作に充てたとの趣旨で一部認めたとされる。 

(http://www.sankei.com/world/news/180322/wor1803220044-n1.htmlより抜粋)

 

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 (画像は李明博元大統領)


 韓国の元大統領が逮捕されるのも、もはやお約束感がある。
 韓国では歴代の大統領が任期終了後に暗殺されるか逮捕されるかのどちらかになるのが恒例だ。今回の李明博元大統領の逮捕も「ああ、やっぱりね」という話だろう。しかしなぜそのような事態が恒例となるのか。そこには韓国の政治システムの問題、そして権威主義的な考え方がある。

 まず、韓国の前に日本の政治システムについておさらいしよう。法治国家ならどこでもそうしているように、日本においても基本的な原則のひとつに『三権分立』がある。モンテスキューが提唱したこの考え方は、国の権力を立法権・行政権・司法権に分け、それぞれ別立てのシステムで運用するというものだ。独裁者が強すぎる権力を掌握するのを防ぐための策であり、立法・行政・司法のそれぞれが互いに干渉せず、抑制し合うことで均衡を保ち、権力の行き過ぎを防ぐ。日本では立法機能を国会、行政機能を内閣、司法機能を裁判所が担っている。

 では韓国はというと、韓国も法治国家であるしもちろん三権分立だ。しかし日本と違って大統領制なので機能の配分に違いがある。大統領が立法権、議会が行政権、裁判所が司法権を持ったうえで、大統領は行政権と司法権にも一定の影響を持つ。これはアメリカなど、大統領制を採用している国ではどこでも同じだ。韓国も建前上はやはり三権分立と言える。
しかしその実態は大違いである。韓国では行政の統治権が大統領にあり、その時点で三権のうち2つを大統領が掌握している。
そしてこれがまた大きな問題なのだが、司法機能が他の国のように完全に独立しているわけではなく、大統領に忖度したり国民感情に忖度したりする。
例えば朴槿恵前大統領が逮捕された時は、韓国国内で朴氏へのヘイトがかなり高まっていた。韓国司法は「国民感情に配慮して」大統領の罷免を全会一致の賛成で決めたと言われている。反対などしようものならどうなることかという状況だったのだろう。
韓国では司法にしっかりした軸が存在せず、右に左にフラフラしている状態で、三権分立が果たせていないのだ。

そして第二に権威主義的なアピール方法の問題がある。これは韓国に限らず、独裁国家などでよく見られることだが、新しい独裁者が就任すると前の独裁者のことを滅茶苦茶に批判・非難・否定するのだ。これは前の人よりも自分の方が優れている、偉大であるというアピール、つまり権威づけのひとつだ。韓国の場合は独裁制でもないのにこのような権威づけが行われている。それが行き過ぎてしまっているのだろう、元大統領の逮捕や暗殺が恒例となっているのだ。

このような背景からして、今回の李明博元大統領の逮捕も、文在寅大統領の差し金であることが容易に予想される。引用した記事によれば実際に李明博氏は『容疑の大半を否認し、今回の捜査を文在寅大統領の左派政権による旧保守政権への「政治報復だ」として強く反発してきた』という。
今というタイミングは文在寅大統領にとっては権威づけを強化する必要性の高いタイミングだ。もともと文在寅大統領は『大統領になったら真っ先に北朝鮮に行きたい』と言っていたほどの北朝鮮シンパだった。北朝鮮へのサービスのためオリンピックを政治利用し、韓国国内でも批判の声が上がっていた。支持率が落ちかけた今、オリンピックも終わっていよいよ5月の米朝首脳会談を控え、韓国もこれを取り持つ形で仲人役をしようとしている。そのためには足元が揺らいでいるわけにはいかない。1月には李明博元大統領の側近が逮捕されている。その頃より前から着々と準備をしてきたのだろう。

 暗殺は時代が時代なのでやりにくくなっているだろうが、文在寅大統領も数年後、逮捕されているかもしれない。


 余談であるがアメリカでは逆に、前の大統領が新しい大統領に嫌がらせをして去るのが恒例になっているらしい。ホワイトハウスの執務室にあるPCのキーボードから新大統領のイニシャルのキーを取り外しておくという話を聞いたことがあるが、本当だとしたらなかなか嫌らしさとユーモアのある嫌がらせである。