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2018年4月12日 アサド政権が化学兵器を使用か

毎日新聞化学兵器疑惑 アサド政権、反体制派排除優先か 製造容易、塩素ガス?

 【カイロ篠田航一、ブリュッセル八田浩輔】シリアの首都ダマスカス近郊・東グータ地区ドゥーマで7日に起きた化学兵器使用疑惑で、欧米諸国はアサド政権による使用の疑いを強めている。政権側は使用を一貫して否定しているが、仮に事実だった場合、国際的な非難が集中するのは確実だ。政権側がリスクを認識しつつも、同地区で最後まで抵抗を続けた反体制派武装勢力イスラム軍」排除を優先し、強硬手段に出た可能性がある。

 世界保健機関(WHO)は11日、東グータ地区で、約500人から有毒な化学物質にさらされたとみられる症状が確認されたとし、「深刻な懸念」を表明した。地下に避難して亡くなった70人超の死者のうち43人は、猛毒の化学物質にさらされた可能性があるという。

(https://mainichi.jp/articles/20180412/dde/007/030/031000cより抜粋)

 

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(画像はWikipediaよりバッシャール・アル=アサド大統領)

 

 シリアでは独裁のアサド政権と反アサド政権勢力が武力衝突を繰り返しており、ロシアがアサド政権側を、アメリカが反アサド政権勢力側を支援し、代理戦争の様相を呈している。またその衝突では化学兵器がたびたび使用されている。
化学兵器の使用は人道的にも国際法的にも違反であり、非難の対象だ。記憶に強烈なのはちょうど去年の今の時期にアメリカのトランプ大統領が、アサド政権の化学兵器使用に対して59発の巡航ミサイル『トマホーク』を撃ち込んだ件だ。中国の習近平国家主席との会談の最中、晩餐会でちょうどデザートを食べている最中に「今まさにこのとき、シリアに巡航ミサイルを撃ち込んだ」と報告し、度肝を抜いた。

 

 今回の化学兵器使用についてアサド政権側は否定しているものの、各国や研究機関はアサド政権がこれを使用したと断定する向きだ。今回使用されたとみられる塩素ガス兵器は製造が比較的容易とされ、窒息などこれまでにアサド政権により塩素ガス兵器が使用された際と同じ症状で死傷した者が多数出ている。

 

 今回の注目は、これに対してアメリカがどう対応するかだ。前回もトマホークを撃ち込んでいることから、今回何もしないというのは考えられない。前例があるのに今回見逃すことは「見逃しますよ」というメッセージを発することになってしまうからだ。ゆえに、どのような攻撃を、どの程度の規模で、どのタイミングで行うかをトランプ大統領は決断することになる。


 ただしアメリカは「世界の警察」をやめようとしている。シリアからも手を引きたいと明言しているため、今回あまり大規模な攻撃を行うと泥沼化してしまい、ますます介入の度合いを強めることになってしまう可能性がある。しかもアメリカはいまシリアよりも北朝鮮に注力したい場面である。政権の要人も対北朝鮮強硬派で固め、米朝首脳会談が決裂に終わった際にはすぐさま軍事攻撃できるよう準備を進めている。

 

 ただ、ここでトランプ大統領がシリアに攻撃した場合、それが北朝鮮への、一種見せしめ的な効果を持つことも考えられる。アメリカは時には迷わず軍事行動も本気でやるんだぞというアピールになれば、米朝首脳会談においてもイニシアチブを握るひとつの材料になる。トランプ大統領がこの局面をどう使うか、ここ数日のニュースに注目だ。