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2018年1月30日 核使用なら北朝鮮は…「地図上から消える」韓国国防相

朝日新聞】核使用なら北朝鮮は…「地図上から消える」韓国国防相

 韓国の宋永武(ソンヨンム)国防相は29日、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮について、「もし開発した核を米国や韓国に使った場合、おそらく地図上から消える」と述べ、実際に核を使用することはないだろうとの見方を示した。訪問先のシンガポールで記者団に語った。

 北朝鮮の核は「使えない核」だと強調することで、南北協議再開後も米国などで消えない北朝鮮への軍事行動論を牽制(けんせい)するねらいがあるとみられる。

 北朝鮮が核の使用をちらつかせるのは金正恩(キムジョンウン)政権の「宣伝扇動の戦略」にすぎないとも述べた。北朝鮮の行動は「韓国や米国に(内政に)干渉しないでほしいという意思表示だ」との考えも示した。

 宋氏はこの日、英国際戦略研究所主催の安全保障フォーラムに出席。韓国の対北朝鮮政策などについて基調講演を行い、「制裁や圧力は北朝鮮を対話に引き入れるためであり、罰するためではない。対話と交渉により平和的に対応していく」などと述べた。(シンガポール=守真弓)

(https://www.asahi.com/articles/ASL1Y6535L1YUHBI01W.html?iref=comtop_8_08より抜粋) 

 

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 韓国の宋永武(ソンヨンム)国防相が北朝鮮情勢について、ある種インパクトのある発言をしている。もしも北朝鮮が開発した核兵器を使用したら、北朝鮮は地図から消えるだろうというものだ。

 

 もちろんこの「地図から消える」は物理的に消滅するわけではなく、北朝鮮という国家の崩壊を意味する。発言の意図としては、北朝鮮核兵器を使用したらすぐにアメリカが北朝鮮を報復攻撃し、北朝鮮はそれに耐えられないという受け取り方でいいだろう。

 アメリカ軍は実際にその能力を持っている。昨年にはアメリカのマティス国防長官が、北朝鮮が反撃できない方法で北朝鮮を叩き潰すことができる旨の発言をしていた。これは「瞬殺作戦」ができるという意味だ。

 ただし、アメリカにはアメリカが正義で北朝鮮が悪であるという大義名分が必要だ。報復攻撃ならできても、先制攻撃はできない、とほとんど言っていいほど慎重になる必要がある。つまり、アメリカが北朝鮮に攻撃するには北朝鮮からの先制攻撃が必要なのだ。

 しかし北朝鮮もそれをわかっている。何か一つアクションを起こせばそれが引き金になるのであれば、目立ったアクションは起こさずじわじわと時間稼ぎをしつつ核開発を進めるのが最適解だ。

 となればアメリカ側にとっては北朝鮮核兵器を完成させる前に、何かのきっかけで先制攻撃を受ける危機を認定し、事実上のアメリカからの先制攻撃に踏み切ることも選択肢に入ってくる。

 

 そこでこの韓国からの「北朝鮮の核は使えない核だ(から、アメリカは不用意に軍事攻撃してくれるな)」というメッセージである。つまり今回の韓国のメッセージは北朝鮮を擁護する立場のものだ。本来は日・米・韓の3国は強調して北朝鮮へ圧力をかけていかなければならない立場と場面であるのに、最近の韓国は逆に北朝鮮に手を貸しているようにも感じるのが残念だ。

 『北朝鮮の行動は「韓国や米国に(内政に)干渉しないでほしいという意思表示だ」との考えも示した』というのも、国際的な軍事問題を内政問題へ転化し、アメリカの関わりを内政干渉と位置付けている。では北朝鮮を放っておいていいのか、と言いたい。

 

 一方で的を射ている発言もある。「制裁や圧力は北朝鮮を対話に引き入れるためであり、罰するためではない」という部分についてはその通りで、もう妥協するしかないというところまで追い詰めるのが制裁や圧力の目的だ。とはいえ、今のところ北朝鮮にそれに応じる姿勢は見えない。

 米CIAの先日の発表によると、北朝鮮核兵器を完成させるまであと数ヶ月だという。この局面でオリンピックを政治利用し、北朝鮮パラリンピック終了の3月まで2ヶ月もの時間の猶予を与えた韓国、なかんずく文在寅大統領の責任は重い。