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ハードボイルドにニュースの解説をします。

2018年3月8日 トヨタが5年連続ベア、今年の春闘で3%以上の賃上げへ

共同通信トヨタ、5年連続ベアへ 一時金満額、年3%超調整
 トヨタ自動車が2018年春闘で、ベースアップ(ベア)に相当する賃金改善を5年連続で実施する方針を固めたことが7日、分かった。労働組合の求めるベア月額3千円に対し、前年の妥結額1300円を維持できるかが焦点となりそうだ。年間一時金(ボーナス)の6.6カ月分は満額回答する方向で最終調整する。年収ベースの賃上げは3%を超える可能性が高まった。
 大手企業の回答が集中する14日に向け、春闘は終盤戦を迎えた。安倍政権は経済界に3%の賃上げを求めている。電機、鉄鋼大手は前年水準より上積みを目指す。

(https://this.kiji.is/344067282317345889より抜粋)

 

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 今年の春闘は大注目だ。
 20年続いたデフレをようやく脱却して、物価が上がり始めている。経済再建の条件が整いつつあり、最後の1ピースは賃金という状況で迎える今年の春闘。企業がどこまで従業員の賃金を上げられるかが今後の日本経済を左右する。

 賃金が上がれば人々の生活に今より余裕が生まれ、物価が上がっても消費行動に萎縮しないようになる。結果、企業の業績が上がり、その帰結としてまた従業員の賃金が上がる良いループに入ることができる。緩やかな経済成長が起き、徐々に景気が上向くだろう。結果的に企業にとっても収益アップを見込める。
 しかし仮に今賃金が上がらなければ、経済全体のパイが大きくならないばかりか、先に上がってしまった物価に家計が追い付けず、消費行動の委縮を引き起こすだろう。現在の状況はデフレではなくなっているとはいえ、何かあればすぐにまたデフレに逆戻りしてしまうだろうと言われている。企業にとっては目先の支出は減らせるが、長期的視点で見れば大きな損失を生み出すことになる。

 そこで政府は財界に3%の賃上げを要請している。経団連の榊原会長もこれを受けて各企業に3%の賃上げを促しており、連合はベースアップ2%を含む4%の賃上げを要請と少し強気だ。
 実際、経済評論家の間でも3%の賃上げが実現すれば景気が上向くと言われている。

そこにきて今回のトヨタの賃上げは明るいニュースだ。トヨタはこの5年間ベースアップを続けている。今回は一時金(=ボーナス)6.6か月分の要請通り満額回答と併せて3%以上の見込みということで、日本最大のトップ企業がまず行動で示すことは大いに歓迎したい。
 景気回復の最後の1ピースの邪魔になっているのは経営者のデフレマインドと呼ばれるものだ。デフレが20年も続いたために、デフレの状況に適応して進化してしまった経営者を、再び経済成長の状況に適応するよう引き戻す必要がある。先見の明がある経営者は既にトヨタのように従業員の待遇改善に乗り出している。しかしまだまだ「賃金抑制は良いことだ」「出ていくカネを1円でも減らすことは良いことだ」という意識も根強い。
 実際には「出ていくカネを減らす」ことではなく「出ていくカネを増やし、入ってくるカネをそれ以上に増やす」ことが経済成長であり、企業の成長だ。「減らせ」というだけなら誰が経営者でも簡単に言えることである。しかしこれからまた成長軌道に乗っていこうという今、成長のための戦略を立て、ビジョンを語ることこそが経営者に求められている。
 今回の春闘は失われた5年後、10年後の日本経済を占う重要なイベントとなる。20年をここで終わらせ、失われた30年にしないための歴史の転換点になるかもしれない。