News: HARDBOILED

ハードボイルドにニュースの解説をします。

2018年3月13日 森友文書、理財局の指示により書き換え

【読売新聞】文書書き換え、理財局が指示佐川答弁に合わせ

 財務省は12日、学校法人「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書を巡り、問題発覚後の昨年2月下旬から同4月に14の文書が書き換えられたとする調査結果を国会に報告した。

 

 当時同省理財局長だった佐川宣寿・前国税庁長官の答弁と整合性を取るため、学園との価格の事前交渉をうかがわせる記述や、複数の国会議員の働きかけなどの記載が削除された。野党側は安倍首相や麻生副総理兼財務相の責任を追及しており、首相は厳しい政権運営を強いられそうだ。

 

 首相は12日、首相官邸で記者団に「行政全体の信頼を揺るがしかねない事態で、行政の長として責任を痛感している。国民の皆さまに深くおわびしたい」と陳謝した。その上で、「全容を解明するため、麻生財務相にはその責任を果たしてもらいたい」と述べ、麻生氏を続投させる考えを強調した。

 

 財務省は、書き換えは理財局の指示により、理財局と近畿財務局の一部の職員により行われたと説明。麻生氏は12日、「書き換えは、最終責任者が(当時の)理財局長の佐川氏ということになる」と記者団に語った。自身が書き換えを知ったのは「3月11日だ」とした。

  

(http://www.yomiuri.co.jp/politics/20180312-OYT1T50082.htmlより抜粋)

 

f:id:arkeninger:20180313190238j:plain

(画像は財務省)

 

 連日報道されている森友学園への国有地売却の決裁文書を巡る書き換え疑惑が大きく進展した。財務省14件の書き換えがあったとする調査結果を発表したのが12日のことだ。

 この問題には論じる点が2つある。まず1点はくだんの「書き換え」自体が、そもそも悪いことなのかどうか。そして2点目は、書き換えが誰の指示で、どのような目的で行われたかである。

 

 まず「書き換え」自体が悪いことかどうかだが、大雑把に良いか悪いかで言えば悪いと考えるが、書き換えそれ自体は必ずしもそうではない。というのは、書き換えられたのは決裁文書そのものではなく『決裁文書に添付した調書』である。これは大きな差で、言ってみればただの添付資料。刑事事件としての「公文書偽造」ではないのだ。ここはしっかり押さえておく必要がある。そもそもこれが違法なことであったならば「書き換え」というふわりとした言葉でなく「偽造」ときちんと報じられるであろう。

しかしそれでも本件が悪だと言えるのは、それを国会に参考資料として提出しているためだ。資料としての能力がないということになり、それをもとにこれまで議論してきた国会での膨大な時間が無駄だったということになってしまう。また、国会に提出するに先立って書き換えが行われたとなれば、都合の悪い内容を隠そうとした意図が透けて見える。この点については批判されて然るべきだろう。

 

ではその矛先となるべき、書き換えを指示した人物は誰か、そして何の目的だったかについては、引用した読売新聞の記事では「理財局の指示で、佐川前長官の国会答弁との整合性を取るため」だったと報じられている。当時の理財局の長官は誰かといえば、佐川氏だ。また「佐川氏の国会答弁との整合性を取るため」という点については当然、佐川氏は国会答弁で適当なことを喋り、後からそれに合わせて文書の方を捻じ曲げたのか? という疑問を生じさせる。

整理しよう。話はおそらくこうだ。近畿財務局は森友学園への国有地売却でずさんな仕事をしたことを国会で追及され、当時の責任者である佐川氏が国会で答弁した。しかし佐川氏は事実と違う、あるいはよく確認せずに答弁をしたため、決裁文書の添付調書と一部食い違う内容となってしまった。そこで後から佐川氏をかばう形で、当時佐川氏がトップを務めていた理財局の指示により、担当の近畿財務局職員らによって調書が書き換えられたのだ。

 

 ここで重要なポイントは、先述の通り今回の件は公文書偽造には当たらないが、佐川氏が国会で虚偽の答弁をしたとなれば、これについては刑事責任を問われる可能性があるという点だ。また、書き換えを指示した理財局のトップだったのも佐川氏であることから、責任は佐川氏が取るのが道理だが、佐川氏はすでに減給処分などを受け、形としては責任を取っている。ただ、今後追加の措置が課される可能性はあるだろう。

 そして野党は麻生財務大臣兼副総理の辞任や内閣総辞職を求める向きもあるが、まず常識的に言って内閣総辞職はありえない。財務省の一部門が起こした不祥事で内閣や首相が責任を問われるというのは明らかに拡大解釈だ。

 しかし麻生大臣については辞任まで行く可能性が高いと考える。本件の最終責任者は先述の通り佐川氏であり、麻生大臣が辞任する必要は本来ないのだが、問題が大きくなりすぎていて、道理が通っていたとしても国民感情や区切りの付け方といった政治的な判断を下すのが妥当だ。安倍総理は現時点では麻生大臣を続投させ、全容解明の責任を果たしてもらいたいと話しているが、その整理がついたところで(あるいはその前に)財務大臣を辞任するのではないかと思う。その場合、副総理として内閣には残るだろうが、麻生氏、また政権にとって、今回の件が痛手であるのは間違いない。