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2018年4月19日 麻生財務大臣、国会承認得られずもG20参加へ

産経新聞麻生太郎氏、国会了承なくG20へ 財務省批判強まる 

 麻生太郎財務相は19日、米ワシントンで開かれる20カ国・地域(G20)財務相中央銀行総裁会議に出発する。福田淳一事務次官のセクハラ疑惑を巡り、テレビ朝日が社員の被害を公表したことで、調査に及び腰な財務省に対する批判が強まるのは必至。森友学園問題を含め問題が山積する中、国会の了承なしでの海外出張に野党から反発の声が上がっており、麻生氏の監督責任が焦点となる。

 財務省は疑惑の調査を弁護士事務所に依頼し、女性記者に被害を申告するよう求めた。国会で調査の徹底を求められても、被害者側の証言がなければセクハラの認定はできないと説明してきた。テレビ朝日が19日未明の記者会見で、女性社員が福田氏のセクハラを受けたと発表したことで、野党などから早期の真相解明への圧力が高まりそうだ。

(http://www.sankei.com/economy/news/180419/ecn1804190019-n1.htmlより抜粋)

 

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 財務省の福田事務次官テレビ朝日の女性記者にセクハラをしていたと週刊新潮が報じた件で、財務大臣の麻生氏にまた矛先が向いている。

そもそもこのセクハラ疑惑については様々、考えるべきところがある。整理しながら辿ってみよう。
 第一報は週刊新潮から出た。しかし被害者はテレビ朝日の女性記者だという。まずこの時点でおかしな話だ。なぜ朝日はテレビ朝日なり朝日新聞なりで取り上げず、週刊新潮が第一報なのか。これについては被害者が上司に相談したところ「難しい」と言われたとされている。上司に相談しても無駄だったから録音を取って週刊新潮にタレこんだというのだ。
 つまり、テレビ朝日は自社の女性記者がセクハラを受けていると相談しているにもかかわらず上司はろくに話も聞かなかったうえ精神的苦痛が容易に想像される当該業務を継続させ、しかもこれだけ大事になるようなスクープを取り逃しているということになる。一会社としても報道機関としてもこれはお粗末すぎないか。

 また、セクハラの証拠とされる録音の証拠能力にも疑問が残る。まずこの録音は編集されていた。それだけで証拠としては怪しくなる。普通このような証拠は会話の流れや状況がわかるようにひとつづきのまとまったものを出す。編集されているとなると恣意的に一部分だけを切り抜いて問題を仕立てあげることができてしまうわけで、そのような疑いを持たれないためにも普通は編集などしないのだ。
 また録音に収録されていたのは福田事務次官の発言だけであり、被害女性の発言はまるまるカットされている。これは被害者の保護のためと言われているが、それも不自然だ。先に述べた理由があるため、普通は被害女性の発言だけ音声を変えるなどして会話の流れを明らかにする。その方がよりセクハラの存在と悪質性を立証できるからだ。
 案の定、福田事務次官は今回のセクハラ疑惑を全否定し「一部だけ切り取られている。全体を見ればセクハラではないことは明らかだ」という趣旨のことを言っている。今回の件がまた「疑惑」止まりなのもこれらの証拠能力の低さ、不自然さゆえだ。
本当にセクハラがあったのであれば許されるべきでも中途半端な追求で終わるべきでもない。しかし現時点での証拠は決定力に欠けるどころか本人が全否定できるほどガバガバだと言わざるを得ない。

 そしてこの録音、一つ問題がある。それは許可なく録音されていることだ。
この手の取材では政治家や官僚との個人的な信頼関係づくりが欠かせない。報道機関が様々な組織の内部情報をどのようにして手に入れるかと言えば、取材とは別の場で何度も食事などを重ねて信頼関係を作り「いやぁ君だから話すんだけど、実はね……」を狙うのだ。そのように情報を提供してくれる対象者を記者の側も守り、匿名の情報提供者として扱う。新聞の記事やテレビのニュースで「関係者によると」という枕詞で出てくる内部情報はそのように漏れ出しているというわけだ。
 しかし今回の録音はまさにそのような「取材とは別の場」での会話であり、ここを録音し、公開するというのは記者と政治家や官僚との信頼関係を揺るがすことにつながる。ここがいつ録音されているか分からないということになると結局記者と会っている時間はすべて取材ということになってしまい、特に女性記者相手にオフレコの場で発言した内容の一部が切り取られて公開され、セクハラだと言われるとなると、女性記者とは一切会いたくないと思う人もいるだろう。朝日・新潮以外の報道機関からすれば「おいおい勘弁してくれ」である。

 一方で福田事務次官のほうも不自然だ。セクハラ疑惑を全否定しているにもかかわらずそれから間をおかずに辞任している。これは一体どうしたことか。本当に無実ならば堂々と否定し、職務を続ければよいが、今回は疑惑が持ち上がってから辞任までの時間も短い。
 思うに、報道されている録音は確かに編集され、恣意的に切り取られたものかもしれないが、実際に今出ている以外にもかなり際どい、ひょっとしたら完全にアウトなセクハラ発言があったのではないか。それが表に出てくることを恐れてさっと身を引いたのではないか。録音の内容を聞くと、福田事務次官の発言内容は誘い文句としてはお世辞にも品があるとは言えない。今出ている以上の致命的な一言がある可能性もある。

 そして一番の問題は、このセクハラ疑惑をまた国会で延々とやっている点である。野党はセクハラ疑惑の監督責任として麻生財務大臣を追及しているが、麻生財務大臣に部下のプライベートな時間の監督責任を問うのは筋違いであるうえ、麻生氏は本日19日にアメリカで開かれるG20財務相中央銀行総裁会議が控えている。野党はこれについても参加を取りやめてセクハラ疑惑への対応をするよう求めている。
 確かにセクハラが事実であれば被害女性は気の毒であるし、福田事務次官は許されるべきではないのだが、麻生氏がG20に出るのを拒否するというのはいかがなものか。(北朝鮮問題などの時勢的偶発的なものを除けば)今の日本にとっての最重要課題は経済であるはずだ。日本は世界の中でも経済規模が大きく、世界の経済の中で存在感を放つことができる。今回のG20で日本が世界経済の中で果たす役割を確認する意義は非常に大きい。国益という観点からして麻生氏がG20に出ないというのはありえない。しかし維新を除く野党はこれに反対しており、与党と維新が国益への配慮を求めているが結局国会承認は得られなかった。

 実はもともと国会承認はG20参加の必要条件ではなく、国会が承認するしないにかかわらずG20には参加できるため、麻生氏はG20参加を表明している。しかしマスコミは「国会承認が得られないまま強行する暴挙」という論調でネガティブキャンペーンを展開中で、残念としか言いようがない。
 たった一つの、それも「疑惑」で国会や他国との会議をすべてストップさせてしまう最近の野党とマスコミのやり方は目に余るものがある。特別委員会でも作ってそちらでやるか、野田聖子女性活躍担当大臣あたりが音頭を取るのがいいのではないか。